2013-11-02

「ないないづくしの起業術」(大和田聡子/中公新書)

「ないないづくしの起業術」(大和田聡子/中公新書)

「起業術」とタイトルにありますが、今年で独立・会社設立10年の私にとっては、起業に必要な技術的な事柄よりも、「なんのための起業か?」「自らが選んだライフスタイルに反しないビジネスの有りようは?」など常に見直しを迫られている事柄をもう一度整理するのに参考になりました。 

この本、タイトル通りどんな業種の人にとっても共通の教訓が語られている「起業術」の本であると同時に「コユキコムギ復活の物語」でもあるんですね。 

たまたま、朝のジョギング中に洗足駅にそんなに遠くない住宅街でベーカリーを発見。店名はワルンロティ。買って食べたらこれが、もちもちして、咬めば咬むほど味がでる。久しぶりに美味しい国産小麦パンを食べさせていただいた。なんどか通っているうちに、お店の片隅で本を数冊目にしたので、ご主人の大和田聡子さん名で検索したら、なんと本を何冊か出していらっしゃる。 

この本はその中の1冊。 

パンにはコユキコムギが使用されています。日本人好みの「もちもち食感」が特長。パンになってこそ粉のおいしさがしっかりと感じられて毎日でも食べ飽きない味わいがある。パン用の国産小麦として大変優れていると言っていいです。 

なんと、大和田さんのお父さんが品種改良の専門家で岩手の試験場勤務時代に開発したのだそうです。岩手県の推奨品種でありながら、いったんは、消えかかったところを、大和田さんが生産者、流通、加工業者をつなぎ、復活を遂げた。その辺の事情が著書にはたんたんと語られているが、その熱意と行動力は脱帽ものです。 

幸い、私は、著者の大和田さんがパンを焼き、販売する姿を知っています。 

規模は小さいものの、大きな理念に裏打ちされた真剣さと情熱、行動力に大いに感化されたのでした。 

著書読了後は、金土日の週三日営業もライフスタイルと矛盾しない適切な選択であることが実感できます。 

パンは発酵の応用食品ですが、大和田さんは、ワインのソムリエ、チーズの専門家としての顔を持つ。

「発酵」という芳醇な食の世界に自然と焦点が定まっていったのでしょうか。その辺の心情、動機や経緯はいつか大和田さんに伺ってみたいところです。

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